VOL.01 「靴を脱ぐ、という美意識」

by SumpryOfficial

古来より、日本の住宅の床は玄関よりも一段高くなっていました。雨の多さと湿気の高さが故に高床が採用され、泥を室内に持ち込まないよう靴を脱ぐ慣習が生まれたのは想像するに容易いでしょう。人の家にお邪魔する時は文字通り、家に「上がる」のです。

ふと考えてみると、お寺のお堂や神社の拝殿は一段高い場所にあります。歴史を振り返っても身分の高い人は一段高い場所に座っていました。つまり、一段高い場所というのは何か特別な場所、神聖な場所である、ということが言えるでしょう。

もしかすると、日本人はこれまで「家」というものを一段高い場所、つまり何か特別な場所、神聖な場所、というように捉えてきたのかもしれません。神聖かどうかは人それぞれですが、今でも家は特別な場所、大切な場所であることに変わりはないでしょう。

汚れを家に持ち込まないため、と考えられていた靴を脱ぐという行為。
それは相手の特別な場所に入れてもらえることへの敬意の表れ、として捉えることができるのではないでしょうか。

玄関先に綺麗に並べられた一足の靴。
そこには日本人の美しい精神が宿っていたのです。